20.未来が始っている

 2007年にリリースされたスマホ(iPhone)であるが、凄まじい勢いで、日本を、世界を席巻して来た。Googleがホームページ検索システムをリリースしたのは1998年である。学生たちが創業したGoogleが世界のインターネット環境を支配するのも、あっと言う間であった。現在、日本におけるスマホの普及率(二人世帯)は88.9%、パソコンは78.5%に及ぶ。この結果、急速に社会全体を大変革しつつある。

 個別に変化を観察する前に、なぜパソコン、スマホが普及したのかを考えてみよう。 Googleは1998年に二人のアメリカ人学生と、貸しガレージから出発した。二人の学生は、インターネットのホームページを検索するアプリケーションを世界で初めて作り上げた。今では「ググる」などと言って当たり前になされていたWeb検索であるが、当時としては画期的であった。ホームページの各ページには6つの「キーワード」検索語を準備している。プロバイダに契約してホームページを立ち上げると、約1か月位でGoogle社から連絡があり、メタタグがメールで送られてくる。それをホームページに書き込むとgoogle検索可能はホームページとなる。Google検索で「自動車」と検索すれば、検索ワードにヒットする「自動車」のキーワードを持つホームページを集めてきて、画面に表示する。ここまではgoogleは一銭も儲けが無い。Google社は、Google検索に対応する「Web広告」権を販売している。誰かがGoogle検索し、表示されたホームページ画面に、「Web広告」を表示する仕組みとした。ホームページの検索表示順位も、Web広告に関連付けられている。ある町の美容院がホームページを開いて、そのCMを、Googleと契約しているWeb広告業者に注文する。その町の近郊で「化粧品」「髪型」などとGoogle検索した人の画面に、その美容院のWeb広告が表示される。そのWeb広告をクリックすると、美容院のホームページに接続されることになる。また、このシステムでは、Web広告を出せば出すほど、検索表示順位が上位になる仕組みとなっている。

 最近「ターゲットマーケティング」が流行っている。パソコンに、日頃良く検索している言葉に関係したWeb広告が表示されていることに気が付いた方も多いと思う。例えば、キャンプ用品に興味のある、中高年、東京都内など、非常に絞り込んだ顧客層のパソコン、スマホだけにWeb広告を流す。市域を限定したWeb広告も多い。住んでいる町の「○○市のリフォーム」「〇〇市のインプラント専門歯科」などのWeb広告がパソコン、スマホ画面に表示される。ある特定の商品をインターネット上で探し回ると、何時までも、その商品のWeb広告が表示され続ける。ここまで、パソコン、スマホが普及してくると、美容院、レストラン、自動車修理業者を探すのも、Google検索を頼ることになる。誰が視聴しているか不明なテレビに巨額な費用をかけてCMを流すより、検索語発生数などがはっきりしているインターネットから、ターゲット層を絞って(広告費用を抑えて)Web宣伝する方がはるかに高効率である。今、広告代理店最大手の電通の売り上げ構成も、テレビ広告19,123億円(2018年)から16,559億円(2020年)(-13.4%)に対して、Web広告17,589億円(2018年)から22,290億円(2020年)(+26.7%)のようにテレビ広告を逆転して、急速に伸びてきている。従来、テレビ広告には全く無関係であった町々の弱小Web広告業者の売り上げまで加算すると、相当大きなものである。ここでは、電通のみの売り上げを取り上げた。Googleへの支払い比率はわからないが、その売り上げの一定部分がGoogleに流れ込んでいるとしても、相当な売り上げとなっていると思われる。社歴23年の会社であるが、世界50か国で14万人の従業員、売り上げ約18兆円の巨大会社に急成長した。その主要商品は広告代理店が作成したWeb広告をGoogle検索システムと関連付けてインターネット上に置く権利である。この独禁法などには全く無関係の独特の商売方法こそがGoogleの革新的発明である。

 Googleによってインターネットは大変便利なものになった。人々は競ってホームページを立ち上げ、お金儲けに利用した。パソコン(インターネット端末)は急速に普及していった。モバイル携帯は、iPhone(スマホ)で本格的にインターネットと接続した。誰もが、どこからでも情報を検索出来るスマホは、一人一台が常識となった。Google検索システムはインターネットの支配を通じて、急速に社会変革を起こしている。 なお、現在インターネット検索システムにはGoogle検索システム、yahoo検索システム、Bing検索システムの3つが存在する。Yahoo検索は画像検索部分を除いたGoogle検索システムで同一のものである。Bing検索システムはWindowsに付随してMicro Soft社が提供している。

 インターネットの普及に伴って、情報産業は急速に形を変えつつある。わかりやすいのは、新聞である。宅配制度に支えられた新聞は1997年5,377万部、2007年5,203万部、2017年4,213万部、2020年3,509万部と激減してきている。1997年からの10年が年平均17.4万部減であったのがその後の10年平均が101.7万部減となり直近1年では272万部減となっている。懸命な拡販努力を続けているのだろうが、この発行部数は「墜落カーブ」を描いている。40代以下はほとんど誰も新聞を購読せず。スマホやパソコンから得られる情報で生活することになっている。最近集中豪雨により、近くの河川が「氾濫危険水位」となったのであるが、スマホを利用して国土交通省地方整備局河川事務所のホームページから住居近くの河川の現在水位と、ライブカメラ映像を手に入れる事が出来た。「雨雲レーダー(アプリ)」などで、現在位置の、5分単位の天気推移を知ることも出来る。事故情報も、地震情報も、自分で探しに行ける。一日遅れの新聞情報の優位性は完全に無くなった。間違えなくあと4~5年で誰の目にも明らかな決着の時を迎える。

 テレビの危機は、Google検索システムとWeb広告の影響による広告収入の激減から来ている。民放テレビ局は、番組クライアントの広告料収入が利益の源泉である。この広告料収入が激減している。これが番組制作の質劣化に繋がり、相乗効果でますます衰退が早まっていくことになる。我が家では、テレビは定時にニュースを見るだけで、あとはネット配信ビデオや趣味の一致するYou Tube番組を見ている。バライティ、ワイドショー、ドラマを見ているよりよほど面白い。辛坊治郎がヨット旅に出かける前にテレビ業界が後10年と言っていたが、インターネットの波に飲み込まれて行く運命だろう。そうすると、NHKも大変態を遂げるだろう。だれも見なくなったテレビは、たとえNHKだとしても、残り続けることが出来るのだろうか。面白い設問である。

 郵政事業は明確に終わりの時を迎えつつある。スマホがほぼ全員に行き渡り、SNS、LINEを含めて、自由に通信が出来る状況となった。日本郵便19万人、24千郵便局を維持できる展望が見えない。しっかりとした撤退戦略を考える必要がある。

ネット販売と宅配システムで、地方小売業界が絶滅の危機を迎えている。バイト先で、機械が故障して修理をしたのだが、修理に必要な「マグボール盤」の安いものを探して、ヤフーオークションやらAmazonでいろいろ検索をかけていた。ある日Amazonから「ボール盤をお探しですか」のタイトルと共に、当方の要求通りの機種がメールで紹介されてきた。多分Amazonでは全国で数十台販売出来れば、商品ラインナップとしてホームページに載せる事が可能であろうが、町の小売店ではいつ売れるか分からないものを在庫する事が出来ない。売れることが無いから知識も無いだろうし、紹介することもできない。ますますAmazonとの差がついていくことになる。これは品揃えが重要な本屋、服飾品、スポーツ用品など様々な小売店業者に及んでいる。美容院、レストラン、大型ショッピングモール、修理屋や、宅配では運ぶことの難しい自動車、大型家具、建築、土木などは地域に残り続けるだろうが、宅配で運べる商品は、amazon、楽天、yahooショップなどのインターネット通販に取って代わられるだろう。

 Google検索システム普及の結果、インターネットは大変便利に充実して来た。その結果、会社組織、役所組織がインターネットの中に飲み込まれようとしている。昨今、コロナ禍でリモートワークが推奨された。実際に商品を製造する工場ラインを除く多くの社員はイントラネット(会社内ネットワーク)に接続されたパソコンで作業し、スマホで連絡を取り合っている。パソコンと、イントラネットに接続できる環境、スカイプなどの双方向会議システムがあれば、どこでも業務が可能となるわけである。会社に出社するのは、製造ラインに携わる人のみで、それ以外は会社に来る必要が無い。営業活動もある程度までは、インターネットを利用したリモート方式で進める。月に数度、地方から本社に顔を出す。そんな事が可能な時代となった。役所も、スマホ普及率90%、パソコン80%の時代で変化し始めている。現在は「情弱年寄」向けに、まだまだ「窓口」が必要であるが、パソコン、スマホを使い慣れた人だけになった時に、役所の事務業務はどうなるのか。住民票などはパソコンにダウンロードされ、そのデータは、そのまま各種申請書類にデジタルデータのままで添付され、ネットを通じて申請される。そして、近い将来ではあるが、その書類を受理するのはAIであることも容易に想像できる。役所は残るが、どのような形態であろうか。

 お金が変わる。カードマネーの登場で、現金を持たなくって、何も不便は無く生活できるようになった。しかも現在、各国でデジタル通貨の発行の直前の状況にある。日銀から発行されるのは、お金の信用情報(デジタル通貨)である。この信用情報が、給与、支払いなどで、現在のカードマネーのように流通していく。そう、今までは曲がりなりにも「お札」と言う現物があったのであるが、インターネットの中に消え失せる。最初は、お札との互換を日銀が保証すると思われるが、そのうちにそれも無くなって、紙幣は博物館入りすることになるだろう。お買い物は全て、「スマホでピッ」の時代がすでに来ている。 その時、銀行はどのような形態になっているだろうか。

 スマホとパソコン、インターネットに絞って展開してきたが、既に始まった未来は相当幅広く、強烈に産業構造の変革を迫ってきている。インターネットとそれに接続したスマホ、パソコンの普及は、すでに様々な分野で巨大な変革を始めている。軍事、運輸、販売、音楽、郵便事業、映画産業、漫画、宝くじ、犯罪、警察、学校、研究など様々なところで変革が激しく進行している。

Report 1 人類と創造力そして未来


目次(ClickJump)
1  はじめに
2  現生人類を特徴つける認知革命
3  認知革命はいかにして起きたか
4  農業革命とお金の発明
5  お金は世界に広がっていった
6  お金が経済を発展させてきた
7  激しい商品開発競争
8  全産業で商品開発競争激化
9  革新的大発明が社会を大変革
10  商品で会社、個人が評価
11  国は経済的合理性で評価
12  社会構造は商品開発力で評価
13  韓国社会(おまけ)
14  お金儲けは時に暴走する
15  経済的合理性と人道の矛盾
16  政治・法律は利権の塊
17  民主的統制で暴走を抑える
18  科学的な政治が必要
19  商品開発の様々なあり方
20  未来が始まっている
21  次の20年の激変
22  輝かしい未来へ
 
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◆ ホームページ発行人 林 信之
    岐阜県多治見市在住
◆ 連絡先 email :
  smilehayashi@wh.commufa.jp
◆ 版権者   林 信之