15.経済合理性と人道の矛盾

 お金儲けとして奴隷貿易がなされた話をしたが、日本の現在でも、経済的合理性の中でモラルハザードが頻発している。この問題を考えてみよう。

 狩猟採集時代のホモサピエンスのお墓から発掘された中に、大けがで一人では生きられないほど障害を負った後に、仲間に助けられて生き抜き、年老いて死んだ痕跡を残す複数の人骨がある。農業革命の中でも、人は、お互いに助け合って生きて来た。そうでなければ三内丸山遺跡のように500人もの人間が集団で暮らすことが出来ないし、コミュニティーを作る必要もなかった。ハムラビ法典は、罪を犯したものの「判例集」である。人間社会には、互助する心がずっと存在し続けた。気の毒な人がいれば、お気の毒にと思う心が存在し続けた。農業革命の頃の人々の心は、その時代に確立された宗教の中に色濃く残っている。慈悲深くて、また非道をいさめる神々を作り出してきた。親鸞(1173年-1263年)の言葉に「善人もて救われる。況や悪人を也。」とある。本当に味わい深い言葉である。他人を思いやる心は、人間が本来持っている本源的なものである。

 農業革命のあと、国王が登場して「権力」が出来上がると、下々で行われている互助の精神を踏みにじる蛮行が行われることとなった。勝者は敗者を奴隷にし、所謂「人権」を踏みにじる蛮行がなされてきた。国王などに奪われた人権は、商業が発達した15世紀ころから徐々に崩れ、世界の中で民主主義国家も増えてきている。しかし、独裁者、共産主義者の人権蹂躙は21世紀の今日まで続いている。独裁権力を持つと、独裁者・共産主義者は、逆らう可能性のあるものを大量に虐殺する。このようにして何億人もの人々が虐殺されてきた。幸いのことに、日本は、平和裏の政権交代が可能な民主主義国家である。大事にしたい。また、世界でなされている人権蹂躙に対して、民主主義国と連帯して監視し、抗議の声を上げ続ける事が重要である。

 死者45名を出した相模原障害者殺人事件は、痛ましい。寝たきりの人間は無価値で、殺しても良いとする犯人の身勝手な振る舞いは許すことが出来ないが、経済的合理性が常に問われる現代社会で、落ち入りがちなモラルハザードであることを理解しなければならない。人間がお金儲けの奴隷となってはならない。

 現代社会は、科学的知識が普及する中で、宗教が徐々に溶けている時代である。昔からお坊様の法話の中で、人々が互いに助け合い仲良く平和に暮らす事を説かれてきたが、今は無い。野党やマスコミは道徳教育と聞くと、「教育勅語」から「戦前の軍国教育」となって大反対である。しかし、地域社会や大家族が崩壊して、人間生活を送る上での大事な考え方を学び、実践する場所が無くなってきている。自分と同じような感情を持ち、同じように考え、家族の為に懸命に生きて、楽しみも悲しみも同様に感じることの出来る他人を理解することは、社会生活をスムースに送るのに大変重要である。貴賤、学歴、地位の上下、性別、年齢に関係なく、人は人として尊重されなければならないと理解することは、人間性の第一歩である。どんな意見に対しても、バカにすることなく耳を傾ける謙虚さは貴重である。人が社会生活を送っていくうえで、特に重要な人間の本質に迫る基本的モラルを、教育の中に取り込んでいくと同時に、英雄に国民栄誉賞を与えるのは宜しいのだけれど、日本に本質的なやさしさ、慈愛を作り出した徳人を探し出して国民全員でほめたたえることが必要だと思う。第一号はスーパー・ボランティアの尾畑春夫さんである。暖かい社会を作り出したいものである。それを政治で主導していただきたい。

Report 1 人類と創造力そして未来


目次(ClickJump)
1  はじめに
2  現生人類を特徴つける認知革命
3  認知革命はいかにして起きたか
4  農業革命とお金の発明
5  お金は世界に広がっていった
6  お金が経済を発展させてきた
7  激しい商品開発競争
8  全産業で商品開発競争激化
9  革新的大発明が社会を大変革
10  商品で会社、個人が評価
11  国は経済的合理性で評価
12  社会構造は商品開発力で評価
13  韓国社会(おまけ)
14  お金儲けは時に暴走する
15  経済的合理性と人道の矛盾
16  政治・法律は利権の塊
17  民主的統制で暴走を抑える
18  科学的な政治が必要
19  商品開発の様々なあり方
20  未来が始まっている
21  次の20年の激変
22  輝かしい未来へ
 
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◆ ホームページ発行人 林 信之
    岐阜県多治見市在住
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◆ 版権者   林 信之