10.商品で会社、個人が評価

 商品が売れるのは、総合力である。レストランを考えてみよう。他レストランには無い美味しい料理は勿論のこと、メニューバリエーション、駐車場の広さ、レストランの雰囲気、テーブル配置、ウエイターの立ち振る舞い・笑顔からトイレの清潔度までお客様が来店して料理を注文して満足していただける理由は様々である。どれか一つでも嫌な事があると、当然ながら二度と再訪することが無い。やはり売れ続けている商品には相応の理由がある。日々、我々が行っている仕事とは何か、その仕事はどのように評価されるかをお話する。

 革新的な差別化商品があれば、確かに商品は売れるが、それだけが売れていく理由でない。レストランで食事をするお客を考えてみよう。他店にない美味しい料理、お店の評判、料理メニューアラカルト、広い駐車場、感じの良い店構え、清潔で静かな店内、余裕のあるテーブル配置、ウエイターの笑顔、トイレの清潔度までお客様がお店に来る(商品を購入する)理由は様々である。仕事の定義は、商品の企画・製造・販売に積極的に関与することである。それぞれの役割の重要度は当然存在する。良く売れて高利益を上げられる商品を企画することは最も重要な事は論を待たない。しかし、商品を提供し続ける事はレストランの例にもみられるように総力戦である。関与する全ての人々の日々の努力が必要である。ビル・ゲイツと日本Micro Soft支社のおばさんの話は有名である。パーティーで見慣れないご婦人が、ビル・ゲイツと親しげに会話していたが、そのご婦人はトイレ掃除のおばさんであったとか言う話である。そこから、そのおばさんは社員がトイレでしていた陰口をビル・ゲイツに密告し、出世に影響を与えたとか、重要な経営決断の意見を聞いていたとかの話もあるが、おばさんとビル・ゲイツが親しかったこと以外は与太話だろう。全社員の英知・努力を結集しないと、激しいお金争奪戦を勝ち抜くことは出来ない。ビル・ゲイツはその事を肌で感じていたのに違いない。ファーストネームの「ビル」「幸子(仮)」で、上下関係なく心から信頼し合って話し合える会社であれば、もう一度現役に戻って務めてみたいものである。また、ビル・ゲイツが心から信頼したおばさんが清掃したトイレを見てみたいと思う。

 研究、開発、商品企画、設備管理、生産準備、製造、販売、経理、人事、総務、厚生福利、社員教育の全てが商品の継続販売に欠かせない重要な仕事である。だから、経営者は、関与する全ての人々に、それぞれの役割の重要性を自覚させる必要がある。出荷検査に軽微なサボタージュがあっても売り上げが激減して、社長は責任をとる。はなはだしい場合は、会社の経営も怪しくなる。全員が協力し合わなければならない。その為に、会社への忠誠心、会社を誇る心が最も重要である。経営者は、皆の熱意の受け皿として努力を続ける必要がある。そして創造力がコミュニケーション力に立脚している事実をしっかり理解して、会社幹部自体がそのコミュニケーションの中心を担う必要がある。上は下が見えないが、下は上まで見える。日産・東芝などの体たらくは、会社幹部が作りだしている。商品の存立条件と同じである。売り上げに貢献できなければ、社長といえども存在出来ない。会社を去ることになる。それは、社員も同様である。商品の継続的提供の足かせとなる社員は、当然ながら会社から放逐されるか、さほど邪魔にならない場所に移動させられることになる。

 ところで、同じように商品の継続販売に貢献する社員であっても、立場によって、商品や商売全体の見る側面が異なる。製造(工場)は、作りやすい商品を求めるし、開発は競合商品に打ち勝つ差別化商品を作ろうとするし、販売は、売りやすい価格の商品を要求することになる。商品開発にはリーダーシップが最も重要であるし、それを担うのは経営者である。バランスよく全体を眺めて、開発目標仕様、原価目標、開発納期を設定して、販売、開発技術、工場に提示しなければいけない。それが無いと技術馬鹿の技術陣は、自分が納得するまで開発を続けることであろう。新しい物であればあるほど、図面を工場に出図しても不安なものである。販売も何時までもコストダウンを求め続けることになる。工場も、生産技術的に改造を要求し続けることになる。もし、経営者が方針を打ち出せず、商品開発のリーダーシップを果たせないならば、権限移譲を含めて経営判断を下す必要がある。何せ競争の最中である。

 本当に素晴らしい商品を、社員一丸となって提供している会社と、全くダメダメで、倒産するだろう会社は一目瞭然である。現役時代、一流会社を訪問する機会が数多くあったが、他の会社とは全く異なる風景があった。工場では、通路に物が置いていないのは当然であるが、通路で立ち話している人はいない。何億円の当方にとって大きな商談であろうが打合せに出てくるのは担当者ただ一人で、時間も約束も正確に守り、無駄が無い。コスト意識が徹底しており、当方の提案を合理的に判断していただいた。流石一流と思わせるものがある。

 一方、経験したダメダメ会社の2つの実話を紹介しよう。  現役時代に様々な経験をしたが、コリャ駄目だと心から思った実話である。30歳の頃に「国鉄」の整備工場に、ある機械を売り込んだ折のお話である。様々な特徴を示して、「この機械を導入すれば、現在10人でなされている作業は、3~4人減らすことが出来ます」と説明したら、先方担当者は怒り出した。「生産合理化(人員削減の事らしい)の話はいらない。そんな機械は導入しない。」と、本当にその商談がダメになった。唖然とした。一般企業は、激しい競争の結果、常にどの部門もギリギリの人数で運営されており、合理化で浮いた人材がいるならば、他の部門に移動して仕事をする。その国鉄職員は、自分たちの仕事が楽になる事以外は興味なかったのであろう。その為に、1千万円を使っても良いと思っている様子であった。お金はお客様から頂けるものとは考えていない様子であった。今まで支払った乗車賃を返せと心の中で叫んでいた。スト権を確立したら、組合からの脱退が相次いだとのニュースを最近見たが、JR東海になって少しはましになったのであろうか。

 「大阪市交通局」である。大阪維新が登場する前の話である。大阪営業からの要請で技術責任者として名古屋から出張した。営業に、何かよほど難しい話かと聞いたが要領を得ない。立派な建物について、打ち合わせに入ると、安全部門責任者やら、管理部門責任者、総務課長やら都合7枚の名刺が渡されて、1時間ほど打合せしたが、話は塗装ロボットプログラミング作成の為の技術者派遣要請の「見積依頼」であった。電話で済む内容で、営業部門で日常的に行っている業務の一つであった。「20万円程度の技術者派遣見積に、業務を止めさせて一日出張させて、お前、コストを意識しろ、バカ」と言ったら、営業が申し訳なさそうに、「すいません。技術責任者派遣をどうしても言い張るものでして」と頭をかいた。それにしても、そんな打合せに大阪市交通局側も幹部7名×1時間である。駄目だ、こりゃと思った。ついでに、塗装ロボット導入効率計算も間違えていた。数台で変わる台車形状に、同じ動作しか繰り返せないロボットを導入してどうなるのか。塗装しているのか、ロボットの面倒を見ているのかわからなくなる。どこにも約1千万円の塗装ロボット導入メリットが感じられない。自分の金でない市民からの税金をドブに捨てていた。働く者としてのモラルが崩壊していた。

倒産しそうな会社はすぐわかる。この会社は長くないなと感じる会社は、見るからに働く者としてのモラルが崩壊している。実例を示すと。
① 平気で会社や上司の悪口を、お客や業者に自慢げに話す。
② 昼休み終わり際に、事務所を訪ねると、多くの社員がパソコンゲームに興じていて、始業ベルがなったあと、ゲームの区切りがついたところからボチボチと画面を切り替えはじめる。誰も注意する気配もない。
③ 工場、事務所の中で、明らかに仕事をせずに立ち話をしている社員が見受けられる。業務時間中に喫煙室に必ず誰かいる。
④ 事務机、事務所内、工場内が何となく汚い。通路に物が置かれている。
⑤ 工場裏のトイレが汚い。
 コスト意識の希薄な会社の社員は、業者が支払うコストにも無関心であり、平気で些細な仕事で出張させ、無理を強いられることになる。ついでに、すぐ威張って人を馬鹿にする。出入り業者もバカではない。この会社、長くはないな、そろそろ警戒しなきゃと心の中でせせら笑っている。

 儲からない会社は、存在理由が無いことを理解する必要がある。社長以下、全社員、全関係者が商品の継続的販売に積極的に関与し続ける事が仕事である。社員全ての積極性を引き出すには、まずは、幹部自らが、率先垂範して楽しく明るく仕事をすることである。そしてフランクにそれぞれに具体的目標を与え、人事評価を明確に出来る限り公平にして、給料に反映させることである。そして掃除のおばちゃんを含めて、全員が目的を意識して、生き生きと、主体的に働くことである。そうでなければ負ける。

 ところで、働く人々が受け取る給与について考えてみよう。職業選択の自由がある社会において、他より安い給料では人々を会社に、仕事につなぎ留めておくことが出来ない。だから、給与は徐々に上昇を続けていくことになる。給料が低く、改善の展望が無いと感じるならば、思い切って転職する事である。そう感じながらする仕事から喜びを得ることは出来ない。

 自由経済社会において、分厚い中間所得層が存在しないと、消費経済が活性化しない。自動車メーカーが大衆車を量産しても、自国、及び他国に、それを購入する多くの消費者が必要である。その為に、国民全体の所得水準を可能な限り高い水準に保つ必要がある。マルクスの考えるような「搾取・収奪」で労働者を疲弊させようと考える会社経営者に出会ったことが無い。一人でも多く優秀な社員を会社に迎え入れて、その能力を十二分に発揮して欲しいと心から願っている。自分たちの出来る限りの給与を出そうと考えている。そして、何時までも同じ会社の仲間として、満足して楽しく働いてほしいと願っている。そして、業界、近辺企業の給与水準を大変気にしている。給与決定の時には「申し訳ない。今の経営状態ではこれが限界だ。隣のB技研と同じ水準で我慢してくれ」と説明する。本当にそう思っていない経営者だと感じたとたん、人々はサボタージュをはじめ、そしてその会社から逃げ出すことになる。

Report 1 人類と創造力そして未来


目次(ClickJump)
1  はじめに
2  現生人類を特徴つける認知革命
3  認知革命はいかにして起きたか
4  農業革命とお金の発明
5  お金は世界に広がっていった
6  お金が経済を発展させてきた
7  激しい商品開発競争
8  全産業で商品開発競争激化
9  革新的大発明が社会を大変革
10  商品で会社、個人が評価
11  国は経済的合理性で評価
12  社会構造は商品開発力で評価
13  韓国社会(おまけ)
14  お金儲けは時に暴走する
15  経済的合理性と人道の矛盾
16  政治・法律は利権の塊
17  民主的統制で暴走を抑える
18  科学的な政治が必要
19  商品開発の様々なあり方
20  未来が始まっている
21  次の20年の激変
22  輝かしい未来へ
 
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◆ ホームページ発行人 林 信之
    岐阜県多治見市在住
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◆ 版権者   林 信之