5.お金が世界に広がっていった

 旧約聖書にも貨幣は登場しているが、それはバビロニアで登場した一定重量の銀である。その貴金属の一定重量シュケルで測られた銀が硬貨に変化することは必然であろう。商売にわざわざ秤(ハカリ)を持ち歩くのは大変不便である。

 そして紀元前640年頃、トルコのアナトリア西部にあったリュディアの王アリュアッテスによって世界ではじめての「エレクトロン硬貨」が造られた。「エレクトロン」とは「琥珀」の意味である。この硬貨は一定量の重さを持つ金と銀の合金で造られたものである。当然ながらその硬貨の貴金属の品質と重量が国家権力によって保障されていた。それはローマ帝国のデナリウス銀貨などに引き継がれた。

 金(G)は初期の段階から貨幣の材料として使われてきた。ここで材料としての金(G)を考えてみよう。金(G)は柔らかい。軽くたたき延ばすと0.0001mmの金箔にまで変形してしまう。金(G)の刀、包丁、ハサミなどは出来そうもない。壁材や構造材料としても不適当である。簡単に傷つくし、ハンマーなどでいとも簡単に変形してしまう。金属材料の金(G)は、王侯貴族の装飾品として使われ、一般庶民には無価値であった。想像していただきたい。金(G)が何キロ家にあっても、何の利用価値も無い。その金(G)の価値認識であるが、原価がさほど変わらない一万円札(約20円)と一円硬貨(約13円)を、金額通りの価値で認識せざるを得ない現代人ならば理解していただけるであろう。当時の人々は日常生活において無価値の金(G)を、国家権力の保証した貨幣価値と同等の高価値の物として認識した。その認識は世界中に広まっていった。貨幣は高価なものであり、貨幣に使われた金(G)も高価なものとなった。そして現在、「兌換紙幣(金(G)との交換が保証された紙幣)」から、金(G)とは無関係な「不換紙幣」となり硬貨の材料もニッケル銅合金や真鍮、アルミなどに代わってしまってもお金の価値を世界中の誰もが信じ切っている。

このようにして、お金は発明された。ローマ帝国の拡大とともに、地中海、インド、中国などユーラシア大陸に広く普及していった。このローマ帝国のデナリウス硬貨は、ディナール通貨と名前を変えて1970 年代までは18か国で、現在でもアルジェリア、イラク等10か国で使用され続けている。そして普及していく中で、すべての人々を熱狂の渦に巻き込んでいった。三千年に渡る、世界全体、全ての人々を巻き込んでの、お金の大争奪戦開始のゴングが鳴った。

 お金が古代国家やローマ帝国で始まり、徐々にその影響力を広げていった。日本でも、最初の貨幣「和同開珎」は708年である。それ以前は、隋、唐から輸入した中国銅銭が使われていた。室町時代(1300年頃)には相当広くお金の影響が広がっていた。織田信長が鉄砲を購入した堺商人や近江商人が登場し、楽市楽座なるものも各戦国大名の領地で盛んに行われていた。江戸時代初期には「大名貸し(大商人が大名にお金を貸すこと)」の言葉も登場する。三井財閥、住友財閥の祖である越後屋、富士屋はこの頃から活動をしている大商人たちである。

 世界に広がったお金であるが、そのお金を得る為に数々の商品開発がなされた。その結果として数々の「革命的大発明」がなされた。お金をめぐる悪事も数々起こされた。紛争、戦争も起きた。金(G)を求めて冒険航海も何度も行われ、民族が滅ぼされ、バブルも何度もはじけた。その結果「革命」も起きた。社会制度も法律も、会社も国もお金の影響で変化を続けている。お金は他の革新的大発明とは異なり、商業、交易の必需品として、人間の本源的な欲求を刺激し続ける媚薬として、より強烈に、幅広く、長期に渡って世界を変革し、ひずみを発生させている。

 農業生産が主体で、帝国が勃興・消滅した古代、王侯貴族・武家勢力の勢力争いの封建時代を、世界史・日本史に詳しくない筆者が、切れ目なく物知り顔で説明できるはずもない。これ以上の解説は古代・中世・近代の専門家にお任せする。これからは、このお金が、近現代社会にどのように影響を与え続けているかをお話しする。

Report 1 人類と創造力そして未来


目次(ClickJump)
1  はじめに
2  現生人類を特徴つける認知革命
3  認知革命はいかにして起きたか
4  農業革命とお金の発明
5  お金は世界に広がっていった
6  お金が経済を発展させてきた
7  激しい商品開発競争
8  全産業で商品開発競争激化
9  革新的大発明が社会を大変革
10  商品で会社、個人が評価
11  国は経済的合理性で評価
12  社会構造は商品開発力で評価
13  韓国社会(おまけ)
14  お金儲けは時に暴走する
15  経済的合理性と人道の矛盾
16  政治・法律は利権の塊
17  民主的統制で暴走を抑える
18  科学的な政治が必要
19  商品開発の様々なあり方
20  未来が始まっている
21  次の20年の激変
22  輝かしい未来へ
 
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◆ ホームページ発行人 林 信之
    岐阜県多治見市在住
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